行政行為の実効性確保のための措置として、行政上の強制措置という制度がある。大きく、将来に亘る行政目的の実現のために行う措置である行政強制と、義務違反に対する事後的な制裁である行政罰に分けられ、行政強制のうち、前提として義務の不履行の存在がないものを即時強制という。即時強制は、火事を消化するために隣家に立ち入ることなど、急迫目前の障害を除く必要上、義務を課す暇のない場合に、義務の不履行を前提とせずに、直接に国民の身体・財産に有形力を加えることである。
行政強制のうち、義務の不履行を前提とする強制執行は代執行、強制徴収、執行罰、直接強制の4つで、総称して行政上の強制執行という。うち、直接強制については、どういった義務について不履行であるかの定義はなく、単に、「義務者の義務の不履行があった場合に」、義務者の身体・財産に直接に実力を加え、義務の履行があったのと同一の状態を実現することをいう。
その他3つの強制執行については、それぞれ前提となる義務の内容が異なり、義務内容に対応する強制執行が存在するような形だ。以下が対応のさま。
代執行 ――代替的作為義務
強制徴収――金銭給付義務
執行罰 ――非代替的作為義務と
不作為義務
更に言葉の意義を下にて記す。
代執行:代替的作為義務を義務者が履行しない場合に、行政庁または第三者が義務者に代わってこれを行い、その費用を徴収すること。
強制徴収:国民が、国または地方公共団体に対して負う金銭給付義務を履行しない場合に、行政庁が強制手段によって(差押え等)、その義務が履行されたのと同様の結果を実現するためにする作用をいう。
執行罰:不作為義務または非代替的作為義務の不履行があるときに、その履行を強制するために科する過料をいう。
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