抵当権の消滅事由は以下の4つがあります。
①付従性による消滅(弁済、消滅時効により債権が消滅)
②時効による消滅(原始取得たる時効取得をした場合)
③代価弁済
④抵当権消滅請求による消滅
①
付従性は、担保物権に認められる通有性で「担保物権が成立するためには、被担保債権の存在が必要であり、担保物権は被担保債権の消滅に従って消滅をするという性質」のことです。
被担保債権があるから、それを担保するための担保物権も存在するわけですから、債権がなくなれば、当然担保物権たる抵当権も消滅します。
つまり、弁済などにより債権が消滅すれば、抵当権も消滅するということです。
②同様に付従性の理念から当然に認められるのが、債権が消滅時効により失われた時は、抵当権は消滅します。
では、担保の目的となっている土地や建物を何者かが占有し、その事実状態を継続したことにより取得時効が完成し、援用をした場合はどうなるでしょか。
担保物権の通有性には
随伴性というものもあり、これは「債権が移転した場合には、担保物権もそれに随伴して移転する」という性質です。
この性質から見れば、時効取得をしたその土地なり建物にも、抵当権はコブのように付いてきちゃいそうなものですが、
時効取得は承継取得ではなく、
原始取得にあたるので、抵当権は消滅した上で、その者の所有になるわけです。
③④その他、抵当権が消滅するためには代価弁済か、抵当権消滅請求という手続きを要します。
これらの制度は、抵当の目的となった物件を第三取得者が取得をした場合に、有用となる制度です。
せっかく手に入れた物件に抵当権が付いていたら、取得者からしてみたら除去をしたいと思うのが人情です。
で、その際に、抵当権者の方から申し出る場合は代価弁済、第三取得者の側から申し出る場合を抵当権消滅請求というわけですが、代価弁済の場合は、抵当権者みずから「この金額を払ってくれたら、抵当権は消してあげるよ」と自分に不利益になることを申し出ているように見えますが、消滅請求を待っていては、第三取得者の言い値で抵当権を失うハメになりますから、先んじて自分の言い値で処理をする方法でもあるのでしょう。
378条 (代価弁済)
抵当不動産について所有権または地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じて その抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。