時効の援用とは、
時効期間の満了によって利益を受ける者が、その利益を主張することです。援用をしなければ時効の利益を得ることはできません。 要件を具備した時効の期間満了と時効の援用、果たしてどの時点において真に「時効が完了した」といえるのかについては諸説あり、主だったものとして訴訟法説や不確定効果説などがあります。
各説については、下記サイトにわかりやすい解説がありました。
http://sky.geocities.jp/gomanobenkyo/mpb/mpb15a.htm
判例では
停止条件説が採られ、時効期間満了によって生ずる権利変動は停止条件(止まっていた契約が、条件成就によって動き出す)とする不確定なものとし、援用があるまで実体的な権利変動は生じないとされています。
時効は期間の満了→援用となってはじめて完成するわけですが、完成せずに中断となることがあります。
時効の中断:時効進行中に時効の基礎となる事実状態の継続が破られたことを理由に、それまで進行してきた時効期間を時効完成にとって全く無意味なものとすること。
時効の中断の効果は、進行していた期間がリセットされ、ゼロにカウントが戻るということです。
時効の中断事由としては(法定中断)、
・請求
・差押え、仮差押え、仮処分
・承認が挙げられ、取得時効においては更に
自然中断(占有者が任意に占有を中止するか、他人に占有が奪われた場合)によってリセットされることもあります。自然中断のうち、他人に占有が奪われた場合、占有者の権利たる占有訴権、具体的には占有回収の訴えを提起し、勝訴をすると失っていた期間を継続していたものとし、中断せずに停止をしていたものとすることができます。
時効中断の細かな知識の補強として役にたつ過去問を次回にて掲載します(結果的に3回になってしまった……)
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最後に時効の重要論点として、短期消滅時効を挙げておきます。
・地代、家賃、取消権、相続回復請求権→5年
・医療費、請負人の工事代、労働債権→3年
・飲食代、宿泊代、運送代、遺留分減殺請求権→1年
・相続の承認及び放棄の取消権→六ヶ月
なお、消滅時効の起算点(初日不算入の原則)は確定期限の定めのある債権ならば期限が到来したとき、期限の定めのない債権ならば債権の成立したとき、停止条件付き債権ならば条件成就のときと、「権利を行使することを得る時より進行」(166 条)する。
短期消滅時効の重要条文として、174条の2を下記にて掲載します。
(判決で確定した権利の特則)
174条の2
10年より短い消滅時効にかかる債権であっても、確定判決が裁判上の和解などによって確定した場合は、時効期間は10年になる。なお、確定期の到来していない債権は除く。
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