行政の基本原則に
法律の専権的法規創造力の原則、法律優位の原則、法律の留保の原則がありました。法律の留保の原則は「行政法の概観」の回でも述べました通り、その原則の妥当範囲について、侵害留保説という考えが現在では通説になっております。法律の留保の原則とは、行政活動を行うためには法律の根拠を必要とするというものですが、行政活動のうち、国民の権利を侵害する内容を持つものに限り、法律の根拠を必要とするという考えが侵害留保説です。対して、すべての行政活動に法律の根拠を必要とする全部留保説がありますが、繁多な行政活動についてあらかじめ全て法律で定めるというのは現実的ではなく、よって侵害留保説が採られているとされます。
法律の専権的法規創造力の原則は、法律を創造する力は法律に独占されるとする原則で、行政には法規を制定する権限はなく、法の執行権限しかないとされます。が、侵害留保説が通説として採択されるひとつの理由同様、すべてのことを国会が定めることはやはり現実的ではなく、状況に応じて、法律の授権があれば、一定の範囲で行政機関は法規を定めることができます。これを
行政立法といいます。
行政立法:行政機関が一般的・抽象的な法規範を定立すること。及び、定立された法規範そのものをいう。
行政立法は大きく
法規命令と
行政規則に分けられ、法規命令はまたさらに
委任命令と
執行命令にわかれます。行政規則には訓令・通達・告示があります。
法規命令は、法規(国民の権利・義務に関する規範)を内容とする行政立法です。法律の授権がなければその定立はできず、授権する法律が失効すれば当然に法規命令も失効します。
委任命令と執行命令の意義は以下の通りです。
委任命令:特定の法律の委任に基づいて行政機関が定立する命令で、新たに国民の権利義務を創設する形で、法律の内容を補充、具体化するもの。個別具体的な法律の委任が必要。執行命令
:上位の法令を執行するために、必要な細目的事項を定めたもの。個別具体的な授権は不要で、一般的委任で足りる。PR